選手になったきっかけ
競技との出会いを教えて下さい
[松若風馬騎手(以下、松若)] 僕は父がJRAの関係者で、装蹄師をやっていたので、子どものころから乗馬に通わせてもらっていたんです。そんな環境にいたので、自然と騎手になりたいと思いました。
[丸野一樹選手(以下、丸野)] 僕は、プロ野球選手を夢見て子どものころから頑張っていたんですが、身長が伸びなくなってしまって…。高校に入ってプロは難しいことが分かり始めたころに、たまたま父にびわこボートに連れて行ってもらって、レーサーがかっこいいなと思ったのが最初の出会いです。選手募集のポスターで身長・体重制限をみて、僕のコンプレックスだった部分が活かせる職業だと知ってすごく魅力を感じてレーサーを目指しました。
それぞれに学校がありますが、厳しかったですか?
[松若] やまと学校は、話を聞いていると厳しいなと思います。
[丸野] 厳しかったですよ。毎朝の乾布摩擦が苦手でしたね。
[松若] 競馬にはそれはないですね(笑)。僕の前の世代はラジオ体操をしていたと聞いたことはありますけど。
[丸野] 学校時代は、乗艇訓練は好きでした。でも、体重の維持が難しかったですね。僕は重かったので、減量が苦しかったです。後は、手先が不器用なので、整備の授業でよく欠点とっていました(笑)。
[松若] 競馬学校は3年間学ぶのですが、苦しいと思うことは余りありませんでしたね。毎朝、検量といって体重測定があって、定められた体重に管理することを徹底して教えられますが、僕は苦労することは少なかったです。他にも、実際に騎乗して学ぶ実技訓練もありましたし、学科で馬や競馬について学んだり、時事問題など一般社会の授業もありました。
デビュー戦のことは覚えていますか?
[丸野] 覚えてます。めちゃくちゃ緊張しました(笑)。前節優勝していたモーターを引いていたんですが、とにかく、フライングだけは切らないようにと、コンマ15のスタートに合わせて全速で行きました。そしたら、トップでスリットを抜けていて横には1、2コースの選手しかいなかったんです。1周1マークを無我夢中で全速ターンしたら「あれ? 前に誰もいない。1等!?」という状態になって。1周2マークもめっちゃ外してターンしているのに、1番手をキープしている自分に焦りました(笑)。内から先輩選手のプレッシャーが今までに経験したことのないキツさで…。結果は勝てましたけど、これがプロの厳しさなんだと感じさせられました。
[松若] 僕もデビュー戦はすごく緊張していました。ゲートに入ってからが緊張していたみたいで、先輩から「もっと力抜けよ」と言われたのを覚えています。レース自体はあっという間で、結果は4着だったと思いますけど、一生懸命すぎて周りが見えていませんでしたね。
松若騎手の初勝利はいつですか?
[松若] デビューレースの翌日に小倉競馬場でのレースがあって、そこで初勝利を挙げることが出来ました。
[丸野] 何走目だったの?
[松若] 2走目で勝てました。
[丸野] 小倉で初勝利か。小倉にけっこう縁あるんやね。
[松若] そうなんです。僕、小倉競馬場には縁があって…。初勝利もそうですし、初重賞勝利も小倉なんです。
ボートレースと競馬
それぞれの魅力はどこですか?
[丸野] ボートレースは1周1マークの6艇の攻防が一番の見どころだと思います。僕が初めて見たときも、迫力がすごいと思いました。エンジン音とか水の上を疾走する姿とか、生のレースを見て欲しいですね。
[松若] 僕もびわこボートで見たレースで、エンジン音、水しぶきの迫力がすごくて、はまりました。思っていた以上にかっこよくて、スピードがありました。
競馬は、ゴールするまでどの馬が勝つかわからないところが面白いと思います。騎手の戦略によって最終コーナーで最後尾から差して勝つ馬もいます。レースは頭脳戦なので、馬の脚力、状態などを見極め、ムチを入れるタイミングや仕掛けどころも大切です。
難しさはどこですか?
[松若] 競馬の場合は、スタートしてからの位置取りが重要です。最終コーナー過ぎた直線で勝負が決まるので、それまでのポジション取りには気を使います。
[丸野] ボートレースの場合は、レース前にモーター相場と各選手の特徴を頭に叩き込んで、レースのシュミレーションをして挑みます。幾通りも予想していないと、レース中に反応出来なくなるので大事です。
馬やボートを操る難しさはどうですか?
[松若] 馬は生き物なので、何を考えているか、どんな気持ちなのかを常に考えていますね。走る馬の状態によって勝負も決まるので、調子とか機嫌とか、伝わってくるものを理解するのが難しいところだと思います。
[丸野] ボートも生き物みたいだと思うこともありますよ(笑)。毎レース同じ状態になることがないんです。気温や水温が違うだけで乗り心地もペラ調整も変わってくるので。出場するレースに合わせてベストの状態に調整するのは難しいですね。
[松若] 自分で全て調整するんですよね。すごいですよね。
[丸野] もちろん、先輩に助言をもらうこともありますけど、やるのは自分ですからね。
[松若] 馬は平日に調教することが出来るので、仕上げた状態でレースに挑めるんです。でも、ボートレースは、節間中に自分で調整するんですよね。難しそうに思います。
[丸野] 馬も難しそうやで。一度、ゲートの下から逃げた馬を見たことあるよ。
[松若] いますね。レースが嫌になって逃げだしてしまったり、気分屋の馬とかもいますしね。
どんなレーサー・騎手になりたいですか?
[丸野] 僕は、ファンの方にすごいなと思ってもらえるレーサーになりたいですね。常に、SG ・G1レースで戦い続ける選手になりたいです。
[松若] 僕も日本のトップ騎手になりたいです。そして、世界で活躍できるようになりたいと思っています。海外で修業をしてみたいです。
刺激し合う2人
出会いのきっかけ
[丸野] 滋賀支部の先輩・吉川昭男さんと騎手の先輩・幸英明さんとが仲が良くて、滋賀支部のボートレーサーと関西の騎手の飲み会が年に2、3回あって、そこで知り合ったのが最初です。
[松若] 3、40人ほど集まるんですが、若手同士席が近くて仲良くなって、僕たち若手ばかりで集まるようになったんです。
[丸野] お互いのレースを見に行くようにもなりました。
刺激を受けることもありますか?
[丸野] あります。実は、最初に出会ったとき、松若くんがとても幼く見えて…。本当に中学生にしか見えなくて。
[松若] (笑)アハハハ。僕がデビューして1年目の時でしたね。その時18歳でした。
[丸野] その松若くんの競馬を見に行ったら、堂々とレースをして、しかも1着とってるし、かっこよくてすごいと思いました。若手で集まったときにレースの組み立て方とかを話してくれることもあって、刺激をもらっています。
[松若] 僕も刺激されます。いつもレースを見ているんです。この間の住之江でのレースも見てましたよ。第7レース、感動しました。
[丸野] 高松宮記念の5日目の第7レース?ありがとう。
若手同士の会ではどんな会話をするんですか?
[丸野] 月に1回くらいは会ってますけど、レースの話は少ないですよ。
[松若] でも、僕の仲間にめっちゃボートレース好きがいて、丸野さんに会うと「なんであそこツケマイやねん」とか言ってますよ。
[丸野] ああ、負けたら「金返せ!」ってLINEが届くこともあります(笑)。
でも、若手が活躍すると、公営競技の業界が盛り上がると思っていますので、お互い頑張ろうって言い合ってます。この間、合同チームを作ろうって話になって、揃いのロゴのTシャツとか雨具とか作りました。
最後に、夢を教えて下さい。
[丸野] 実は、お互い頑張って注目されるようになって、対談とか、一緒に仕事できたらいいなと話していたんです。それが実現できました。
選手としては、SG・G1で活躍して勝てる選手になりたいと思います。
[松若] 僕は競馬ですが、若手で盛り上げて、もっと競馬を身近にしていけたらなと思っています。そのためには自分も頑張って上を目指さないといけないなと感じています。
後、ボートに乗ってみたいんですよね(笑)。丸野さん、一度ペアボートに乗せて下さいね。